2009年 10月 24日 ( 1 )

質素で美しい幼稚園


当時、ぼくらはアーリングソースという町に住んでいた。スウェーデン南西部、第二の都市イェーテボリィから内陸へ45kmに位置する、人口2万人程の可愛らしい町。石畳を往来する人や車の気配が耳に心地いい街の中心部には、住人一人当たりの数が国内一といわれるカフェが並んでいる。

越してきて間もなく双子の娘を授かり、1年と数カ月が過ぎたその夏、ぼくたちは2つの幼稚園を見学に訪れた。1歳半を機に娘たちを通わせ始めることを考えていたのだ。
ひとつはモンテッソーリ系、もうひとつはシュタイナー系。資料を集めた中で興味をひかれたのがその二つだったからなのだが、白状すれば、ぼくはそれらの教育理念について全く知識がなかったし、今もほとんどない。
(ちなみにこれらは私立幼稚園だが保護者が負担する料金は公立の幼稚園と変わらない。また、保育園と幼稚園の区別もない。)

モンテッソーリの方は比較的町の中心地に近く、大きな公園の一画にあった。
そこは井戸水を飲用する療養施設として1820年代に建てられたという象牙色の木造建築。その中央の真っ白い扉を開けると、明らかに子供達の知的興奮を刺激するような空間が広がっていた。きれいに改装された広い部屋には、丁寧に作られたことがうかがえる玩具、教具類が豊かにそろい、慎重に配置されているようだった。形や色の要素が多様なのに、決して雑然とはせず、むしろ整っている印象だった。
異なる年齢の子どもでグループを作る、いわゆる縦割り教育も特徴的である。
「私たちはまず家族や友人について考え、町について学び、地域、国、そして世界へと視点を広げていきます。」
面接をして下さった園長先生は、活動的でカジュアルな服装を身にまとい、朗らかに頼もしく説明をしてくれた。様々な仕組みや仕掛けがひとつの秩序の中で調和しているかのようだった。

シュタイナーの方はある意味対照的だった。
園舎は伝統的木造民家で、インテリアも伝統的民衆家具で統一されていた。家も家具もじっくりと時間を蓄えている表情だった。屈託がなく、作為を感じさせない空間は、幼稚園とは思えぬほど静謐で、かつ家庭的に感じられた。窓からの光が安らかだった。
数少ない玩具はどれも木材やテキスタイルなどの天然素材を用い、色彩と造形を控えめにして素材感を生かしてあった。食事は菜食で有機栽培のものに限っていて、その日台所を覗くとひよこ豆のスープを作っていた。
「外で遊ぶことと生活のリズムを大切にすること以外、特別なことは何もしません。」
これほど穏やかに話をする女性をぼくは知らない。生成のワンピースと桜色のエプロンは共に麻製と思われ、先生によく似合っていた。
教育をあえてせず、子供たちのうちなる空想力を羽ばたかせる。そのためのもうひとつの家のようだった。

両者それぞれに感銘を受けたけれど、より感動させられたのは後者だった。
ぼくたち夫婦の母校であり理想郷であるカペラゴーデンの創設者、カール・マルムステンの思想にも共通するにおいがした。
少なくとも今のぼくたちにはこんな質素で美しい暮らしは実現できない。ならばこの子たちに一時でも体験させてやりたい。そう思った。

しかし、結果的にぼくの仕事の関係で別の土地に引っ越しすることになり、入園は果たせなかった。そして残念ながら新しい町には同様の幼稚園はなかった。



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妻の従姉妹はイギリスでシュタイナー教育を学び、現在、ここ静岡でその普及と実践の可能性を模索している。
ぼくも少しばかり木製遊具の制作を担当させていただいた。

シュタイナー幼児教育の会
日時:  毎月第3金曜日 10:00 ~ 12:00
会場:  あざれあ(静岡市駿河区馬渕)
会場代: 300円
対象:  どなたでも(子供連れ可)

シュタイナー幼児教育の内容を実践した「親子教室」
日時:  毎月第2火曜日・第4木曜日 10:00 ~ 12:00
会場:  北部生涯学習センター(静岡市葵区昭府)
参加費: 1回につき1,600円
対象:  2歳以上の子どもとその保護者

参加ご希望の方はtass遠藤までご連絡ください。
追って連絡先をお知らせいたします。


by tass-blog | 2009-10-24 17:05 | 日々 | Comments(0)